STORY
物語
5月20日、月曜日。通学路の坂の下には、信号の変わり方が意地悪な交差点がある。僕は毎朝そこで四十秒を無駄にする。今朝はその四十秒の中に、一年前から想いを寄せる同級生・望月明日香がいた。
放課後、僕は彼女に告白する。答えは「ごめんなさい」。――その夜、夢を見た。ブレーキの悲鳴。宙に散らばる教科書。8時5分で止まった腕時計。そして目が覚めると、また5月20日の朝だった。
繰り返す今日の中で、彼女の「変」が積もっていく。売り切れを言い当てる。見ていない方角の危険を、先に避ける。去り際に呟いた、あの一言。
「……その言い方は、初めて、だったな」


