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エンディングを6から9に増やすとき、数ではなく軸を足した話

四十秒の交差点

公開済みのループものADV『四十秒の交差点』に、結末を3つ足しました。増やすと決めてから最初にやったのは、書き始めることではなく、いまある6つがどこに置かれているかを図にすることでした。

この記事は分岐の構造の話です。個々の結末の中身や、物語の真相そのものには触れません。

格子は、もう埋まっていた

並べてみると、既存の6つはきれいな格子に収まっていました。縦軸が「今日に留まるか、明日へ進むか」。横軸が「二人でそうするか、一人でそうするか」。それに、関係が壊れたときの結末が加わる形です。

ここで分かったのは、この格子の中に7つ目を置いても、既存のどれかの薄い変奏にしかならないということでした。「明日へ行くが、少しだけ違う明日」を足したところで、プレイヤーには増えた実感がありません。数を増やすなら、格子そのものを広げる必要がありました。

足したのは「知ってしまう」という軸

本編で一度も説明していなかったものがありました。ループの仕組みそのものです。なぜ繰り返すのか、何が引き金なのか、代償は何か。物語としては説明しなくても成立していましたが、説明していない領域がまるごと残っているのは、新しい軸としては理想的でした。

そこで、仕組みを解明していく手がかりを3つ用意し、全部揃えたときだけ選べる結末を追加しました。縦横の格子に対して、奥行きが1本増えた形です。

いちばん悩んだ判断: 真相と最良の結末を、両立させなかった

ここが今回の設計の核心です。仕組みを解明する3つの手がかりのうち1つは、本来なら別の重要な情報を取るはずだった枠を使います。つまり真相を追いかけると、最良の結末に必要な材料が揃わなくなる。両方は取れません。

普通に考えれば意地悪です。「全部集めたら全部見られる」ほうが親切に決まっています。それでも排他にしたのは、この物語のテーマと噛み合うと思ったからでした。

ループものは、何かを得るために何かを諦める話です。その構造をシステム側にも持たせたかった。プレイヤーが「知りたい」を選んだ瞬間に「救いたい」を手放すことになるなら、選択に重さが出ます。逆に全部取れてしまうと、真相はただの収集要素になります。

実装上は、ある枠で片方を選ぶともう片方のフラグが立たない、というだけの単純な話です。難しいのは実装ではなく「不便を意図的に残す」と決めるところでした。

「選ばない」も選択にした

もうひとつ、最後の問いかけの場面で何も選ばずにいると現れる結末を用意しました。プレイヤーが決めあぐねて手を止めることそのものを、ひとつの答えとして受け取る形です。

ただし放置した瞬間に勝手にその結末へ進むようにはしていません。席を外していただけの人が事故で到達してしまうからです。時間が経つと選択肢が静かに一つ増えるだけにして、選ぶかどうかは最後までプレイヤーに委ねました。「選ばない」を選択として扱うなら、それも能動的に選ばせないと筋が通らないと考えました。

おまけ: 主人公が主役でない2本

結末とは別に、同じ一日を主人公以外の人物の目から描いた短い読み物も足しました。片方は物語の中心にいない人、もう片方は何も知らないまま日常を過ごしている人です。

これは「結末」ではないので、記録画面でも別の枠にしてあります。数字を水増しするより、種類が違うものは違う場所に置くほうが、集めている人には親切だと思っています。記録画面のカウントも、ゴールに当たる結末・道の途中で落ちる分岐・別視点の3つに分けました。

教訓

やってみて思うのは、分岐を増やす作業は書く作業ではなく、まず地図を描く作業だったということです。既にあるものを図にしないまま足すと、埋まっている場所に重ねてしまいます。図にすれば「空いているのはここだ」が見えて、そこに置くものは自然に決まりました。

そして、親切さと物語の筋が対立したときは、筋を選んでよかったと思っています。全部見たい人は2周すれば見られます。1周のなかで両方取れてしまうことのほうが、この物語では失うものが大きいはずでした。