STORY
物語
5月20日、月曜日。通学路の坂の下には、信号の変わり方が意地悪な交差点がある。僕は毎朝そこで四十秒を無駄にする。今朝はその四十秒の中に、一年前から想いを寄せる同級生・望月明日香がいた。
放課後、僕は彼女に告白する。答えは「ごめんなさい」。――その夜、夢を見た。ブレーキの悲鳴。宙に散らばる教科書。8時5分で止まった腕時計。そして目が覚めると、また5月20日の朝だった。
繰り返す今日の中で、彼女の「変」が積もっていく。売り切れを言い当てる。見ていない方角の危険を、先に避ける。去り際に呟いた、あの一言。
「……その言い方は、初めて、だったな」
THE LOOP
一日の組み立て
繰り返すのは、いつも同じ5月20日です。一日は朝・昼休み・放課後・夜の四つに区切られていて、それぞれの時間にどこへ行くかを選びます。行き先は全部で十六か所。交差点、教室、屋上、図書室、神社、夜のコンビニ、海。
ひとつの周回で全部を回ることはできません。朝に交差点で彼女を観察していれば、その朝、教室で聞けたはずの話は聞けないままになります。選ばなかったほうは、その日には戻ってきません。
拾ったものは「手がかり」として残ります。これは周回をまたいで積み上がります。今日の朝に見つけたことを、明日また探し直す必要はありません。だから二周目からは、行き先の選び方が変わります。同じ一日なのに、持っているものが違う。
ただし、集めれば集めるほどいいわけでもありません。彼女に踏み込みすぎると、警戒が積もります。積もりきると、話してくれなくなる。知ろうとすることと、隣にいつづけることが、そのまま両立しません。ここがこの物語のいちばん苦しいところで、いちばん面白いところだと思っています。
画面右上には手がかりの一覧と、たどった道の記録がいつでも開けます。まだ拾っていないものは「???」のまま。何が足りないかは、埋まっていく空欄の形で分かります。